2021年03月10日(水曜日)
ポリウレア樹脂は「強度と柔軟性」「耐薬品性」「耐衝撃性・破壊抵抗力」等に優れた樹脂材料にな りますが、防水材として使用されている吹付型ポリウレタン等と比べても劣悪な環境下で使用され ることが多く、吹付け方法においてもポリウレタンと比べても難しいとされているため、施工前・ 施工中においては優れたポリウレア塗膜の最大限のパフォーマンスが出せるよう注意しながらの施工が求められます。 弊社は2010年よりNUKOTEポリウレアの日本総代理店として多くの現場を経験して参りました。
ここではポリウレア施工時において起こりやすい不具合の例及びその対策方法について記載させていただきます。
①ポリウレア塗膜自体に薬品・摩耗・耐熱などの耐性が不足している場
使用するポリウレアが、対象となる保護すべき内容物に対して耐性がない場合、塗膜の劣化や軟化・硬化などにつながり、塗膜の亀裂や破損、溶解などにもつながります。
→上記を防ぐために、事前のポリウレア塗膜浸漬試験、暴露試験を行ってから施工可否の判断を行うことを推奨しております。
②下地処理に不具合がある場合
下地とポリウレアとの接着不足・接着不良が起こる場合は、塗膜の膨れや剥がれにつながります。 また下地に水分が残っている場合や接着の弱い既存塗膜が残っている場合は、結局ポリウレアと下地の接着不良につながるため、不具合の原因となります。
特に摩耗などが起こっている対象物の場合は、浮いた塗膜が摩耗部に直接あたる場合、塗膜の亀裂につながります。
→上記を防ぐには、適切な下地処理(既存塗膜除去・ケレン・ブラスト・高圧洗浄など)、脱脂・乾燥 (含水率の確認)をした後に適切な方法でプライマー処理を行い、適用時間内にポリウレアの作業を行うことが大切です。
③施工機械に関する不具合が起きる場合
吹付け機の圧力不足もしくは圧力低下による塗膜の強度不足、配合が 1:1 で行われていない場合の硬化不良、加温不足もしくは温度が下がってきている状態でポリウレアを吹き付ける事による硬化不良など、使用機械の不具合による塗膜の性能不足による不具合が起こります。
→ポリウレアはポリウレタンよりも施工が難しい材料と言われております。 材料の正しい事前加温及び圧力管理は欠かせません。
最大塗布圧力や最大加温温度などポリウレアを吹付けるために必要な数値が足りていない機械でポリウ レアを吹付けする場合は慎重に吹付け施工管理を行う必要があります。
特に XT plus(耐薬品)やHAR(耐摩耗)など現場条件の悪い中で使用する場合は、塗膜の性能不足は即塗膜の剥がれや亀裂につながりますので注意が必要になります。 しっかりした事前加温や吹付け時の圧力の低下などを見逃さずに、圧力や温度が下がった場合は、こまめに施工を止めて適正値になった後に吹付け施工を行うことが大切です。
※吹付け装置の注意事項については、別途「NUKOTE ポリウレア加温吹付けタイプ塗布機械に関する 注意事項」も併せて参照してください。
④膜厚不足による不具合が起きる場合
耐薬品の場合は 2mm厚、耐摩耗や可動部など動きのある下地に対しては3mm 以上の膜厚を推奨して おりますが、膜厚不足が起こる場合は塗膜の亀裂や剥がれなどの原因となります。
→上記を防ぐため、特に吹付けが行いづらい箇所、端部や役物、ジョイント付近などでは慎重に膜厚を確保する必要があります。また翌日に吹き重ねを行う場合でも重ね部分は少し厚めに吹くなどの処置が 必要となります。
※補足:弊社では標準膜厚を平均 2mm、最低膜厚を平均 1mm としております。ポリウレア膜厚の公差は約±0.5mm であるため、1mm 未満の厚みの場合、極端な薄膜箇所が出てくるため推奨しておりませ ん。また 2mm 以上の膜厚を確保したい場合は平均 2.5mm 厚(2mm~3mm)、平均 2mmの場合は1.5mm~2.5mmとして仕様の検討を行ってください。
⑤端部処理方法や端部設置場所に不具合が起こる場合
例えば水流がある場所に施工端部が来てしまう場合、端部の見切りをせずに端部付近の膜厚が足りずに剥がれを起こす場合、端部に薬品が徐々に内面に侵入してプライマーを少しずつ侵していく場合は、塗膜の剥がれや浮き、亀裂につながります。
→上記を防ぐため、出来るだけ施工端部は喫水面の上とし、摩耗・水流を直接受ける部分に作らないようにすることが大切です。もし直接受ける部分に施工端部がくる場合は、ステンレスバーなどでの物理的な接着の併用、端部のV カットによるポリウレアと下地の活着強化、シーラント処理による施工端部 内面に薬品が入っていかないような処理を考える必要があります。開口部などの処理も注意が必要となるため、全ネジボルトを事前に溶接してポリウレアを吹付けてからボルトで締めて、さらにポリウレア で吹付けを行う等の処置も検討してください。
また施工端部は必ずマスカーやワイヤートリムなどで見切りを行い、膜厚を確保した状態で施工端部を作らないと、薄い部分からの不良につながります。
⑥ジョイント部からの亀裂により塗膜の剥離が起こる場合
ブチルテープやスタイロフォーム、遮水シート等ポリウレアの下地にシート状の材料を併用する場合、 シートのジョイント部がポリウレアの吹付け温度によって少しずつ反ってしまい結果ジョイント部が薄膜になる事でポリウレア塗膜が剥離してしまうケースがあります。この現象は 70°Cのポリウレアで勢いよく吹付けを行う場合ジョイント部が若干反ってしまう為、それに気づかずに吹付け作業を続行した場合、見た目上は均等な膜厚が確保されているように見えても、実際は反ってしまった上に吹付けられた ポリウレアは他の部分よりも薄い膜が出来てしまう可能性が高くなります。 (下図参照) 特に標準タイプの ST(約 400%)よりも伸び率の低いXT plus(約 80%)等での施工の場合は浮いている箇所に吹付けられた薄い塗膜が、若干反ったジョイント部の動きや薬品耐性の中で耐え切れずにジョイント部で亀裂が起こりやすいため特に注意が必要です。
→上記を防ぐため、ジョイント部に吹付ける場合には以下の点に注意する必要があります。
・ジョイント部のシールは念入りに行い、必要に応じて物理的な接着も併用しながら、ジョイント部の反りを最小限にする施策を行う。
・反りを事前に予測し、ジョイント部は厚めに吹付けて、なるべく均等な膜厚を確保する。
・ジョイント部には、まずシボを施すようにポリウレアを少量吹付けした後、硬化まで少し待ち、ジョ イント部を定着させてから吹付けを行う事で反りの発生をなるべく抑えるように注意する。
・ジョイント部には、まずシボを施すようにポリウレアの少量を吹付けした後、硬化まで少し待ち、ジ ョイント部を定着させてから吹付けを行う事で反りの発生をなるべく抑えることが可能になります。