工場の屋根が劣化してきて改修や補修を考える場合、その方法は大きく分けて3通りあります。
「屋根葺き替え工事」「屋根カバー工法」「屋根塗装」がそれになります。
それぞれどういった工法なのかを簡単にまとめてみました。
屋根葺き替え工事
「屋根葺き替え工事」というのは、現状の劣化した屋根を一旦取り除いて処分し、新しい屋根材を取り付けるという工事になります。
古くなったので、新しいものに付け替えるという一番シンプルで見た目も刷新されてキレイな形になります。
屋根材は劣化すると雨漏りや落下の原因となり、近年では台風などでの吹き飛びの懸念も増しているため、
大事に至る前に、屋根を取り換える事を考えなくてはなりません。
ただし屋根葺き替え工事には相応の撤去費用が必要であったり、劣化した屋根を剥がすので工期がかかったり、
場合によっては工場の操業を長期間停止する必要も出てきます。
もちろん、工事中の騒音やほこりなどにも充分な配慮をする必要があります。
特に古いスレート材には2004年より使用が禁止になったアスベストが含有されたものが多くあり、撤去や
廃棄には注意が必要です。 また撤去費用もアスベストが含有されていないものと比べるとかなり高くなります。
このように、屋根の葺き替え工事には「費用」「工期」「長期間の操業停止」「アスベスト含有スレートの飛散
防止対策」など、課題や問題も多くあり、葺き替え以外の方法で屋根を長寿命化させる方法も検討されています。
屋根カバー工法
「屋根カバー工法」は、現状の劣化した屋根の上に新しい屋根を乗せて、要は二重構造にする仕組みになり
ます。
そのため、「屋根葺き替え工事」と違って廃材がでませんので、その分費用を抑えることができますし、撤
去期間がないため、工期が短くなるメリットがあります。
しかし、2重構造ですので本来よりも重厚感がでてしまい、建物全体の見た目のバランスが崩れ、デザイン
性が損なわれてしまう可能性があり、屋根の重量も増します。
既存屋根に腐食や雨漏りがある時など、既存屋根の劣化が激しい場合はこの「屋根カバー工法」が適用出来ない
ケースも考えられます。
また古いスレートを「屋根カバー工法」で工事する場合、既存の屋根に釘やねじで孔を開けながら施工するため、
アスベストの飛散リスクが増す事も懸念されます。
屋根塗装
最後に「屋根塗装」になります。「屋根の葺き替え工事」や「カバー工法」と比べても手軽に出来る事がメリットと
言えるでしょう。
塗装にはいろいろな種類があり、費用や効果も様々です。
アクリルやシリコン、フッ素などの塗料は、葺き替え工事で新しくなった屋根に塗る事で、屋根の寿命を延ばす事
が出来ます。また「工場が暑い」という問題は工場が抱えている大きな問題のひとつであり、工場の温度を下げる
事が出来る「遮熱塗料」は費用の安さも相まって、人気の工法のひとつです。
ただし、塗料だけでは防水や補強には繋がりませんので、ここでは「遮熱防水塗料による工法」 「ポリウレタンに
よる工法」「ポリウレアによる工法」の3つの工法を比較してみたいと思います。
「遮熱防水塗料による工法」
現在遮熱塗料には様々な種類があり遮熱塗料を検討されているお客様の中は、どの遮熱塗料が一番良いのか頭を悩
ませている方も多いかと思います。 おすすめは「遮熱」と「防水」が同時に出来るような塗料です。
伸び率の高い塗料を使用する事で、雨漏り対策と工場温度の低下が比較的安価で実現出来ます。
ただし補強には繋がりませんので、古くなった既存屋根の踏み抜きの危険性、強風による吹き飛び防止などには効果
は期待出来ませんので、あくまで「防水」「遮熱」を優先する場合の工法と言えると思います。
また金属屋根と違いスレート屋根の場合は、スレート同士の継ぎ目部分の防水が必要になるため、塗膜としては薄い遮
熱防水塗料で完全に防水が出来るかどうかについても疑問が残ります。
「ポリウレタンによる工法」
防水材として一般的に使用されているポリウレタンに断熱材を併用する事で、工場の温度が安定する事や、既存の屋根材
の踏み抜き防止などに繋がる事もあり、カバー工法と合わせて検討工法に入れている方も多いかと思います。
ただしポリウレタン樹脂は長期的な強度に問題があったり、遮熱塗料も同様ですがトップコートの耐用年数に合わせて
塗り直しをする必要があります。
鳥が口ばしでつついて、ポリウレタンの層が破れて雨漏りにつながったという事例もあるようです。
「ポリウレアによる工法」
ポリウレアを使用して屋根の再生を行う事は、台風による屋根の吹き飛びの懸念や飛来物による屋根の破壊などの懸念が
増したことも相まって、その候補として最近とても注目を浴びている工法です。
ポリウレア自身が持っている優れた耐久性能と強度は、既存屋根の踏み抜き防止やそれ以上の劣化防止に役立つ他、強風
時の吹き飛び防止や飛来物からの衝撃吸収などの期待も大きい工法です。
美観維持や黄変対策としてトップコートを併用する場合もありますが、純ポリウレアは耐候性も優れているためトップ
コートが必要なかったり、トップコートの塗り直しの必要が無い事は大きなメリットのひとつだと考えております。
また費用は増しますが、「断熱ウレタン」や「遮熱塗料」と併用する事で、「防水」「補強」「遮熱・断熱」など様々な組
み合わせが可能な事も「ポリウレアによる工法」のメリットと言えるかもしれません。